ダイエットをするときに、低糖質ダイエットと言うのを聞いたことがあるでしょうか。
もしくは、トレーニング方法として、マフェトン理論(脂肪をエネルギーとして使えるようにするため、炭水化物の摂取量を控えめにして運動する方法)を聞いたことがある方もいるかもしれません。
さらには、血糖値を上げやすい砂糖などによる血糖値の急上昇、急降下がダイエットの敵なので、血糖値を上げにくい糖質の方が良いという理論を聞いた方も居るかもしれません。
脂質に次いで悪者にされがちな糖質ですが、何事もバランスが大事です。
ダイエットは、三大栄養素、タンパク質、脂質、糖質をバランス良く摂り、加えて、微量元素、食物繊維、水分をしっかり摂ることが基本です。
通常時はまずタンパク質量を確保して、揚げ物などの油ものを避けつつ一日の総カロリーを糖質でコントロールするのが王道ですが、運動時にはまず、燃料としての糖質を補給する必要があります。
ここでは、日常生活ではなく、1時間以上の運動で、自転車に乗りながら補給することを念頭に、エネルギー補給のやり方を考えてみます。
なお、自分用のまとめなので、非常に長い記事になっています。
一般的に書かれている情報は体重70kg位の男性が想定されている場合が多いので、身体が小さい女性にはそのままでは当てはまらないことが多いのです。
面倒な方は、以下のいずれかで。
・CCDやポカリの粉でボトルにドリンクを作り、1時間に1本飲む
・ボトルの水を1時間に1本+1時間毎のコンビニなどでの補給(羊羹1個150kcal程度など糖質40g程度+消費したボトル1本あたり塩1.5g)をとる
普段の食生活の考え方はこちら→
炭水化物/糖質/糖類の違い
炭水化物は文字通り、炭素原子と水素原子が結びついたものです。
炭水化物のうち、エネルギーにならない食物繊維を除いたものが糖質。
さらに、糖質のうち、グルコースなどの小さな塊を糖類といいます(図1)。
人は糖質をエネルギーとして筋肉を動かしています。
(図1)炭水化物、糖質、糖類
グルース=ブドウ糖、フルクトース=果糖、スクロース=ショ糖・砂糖など、同じ物質でもカタカナ表記と和名の両方が使用されているのがややこしいですね。
糖質と運動時のエネルギー
運動するときに、有酸素運動の方が脂肪燃焼によいとか、筋トレやダッシュは無酸素運動だとか聞いたことがあるでしょうか。
私たちが食べた糖質は主にグリコーゲンとして体内に蓄えられます。
そして、無酸素運動は筋肉に蓄えられているグリコーゲンを直接分解してエネルギーを生み出す運動です。
一方、有酸素運動は、酸素を使って脂肪を燃焼させてエネルギーを生み出す運動です。
しかし、有酸素運動も脂肪だけを使っているわけではなく、脂肪を燃焼させるための火付け役として、有酸素運動でも最低でも生み出されるカロリーの約25%はグルコースが担っています。そしてこのグルコースはグリコーゲンが分解されたものや、血中のグルコースが使われます。
つまり、無酸素運動にはグリコーゲンが、有酸素運動にはグリコーゲン由来のグルコースが使われるので、程度の差こそあれ、どんな運動でも糖質が使われるということです。
また、ここよりきつい運動は無酸素運動、それより緩い運動は有酸素運動ときれいに分かれるのではありません。糖質100%脂質0%の運動から糖質25%脂質75%の運動まで運動強度によってグラデーションで変化していきます。中~高強度(VO2Max65~85%、Zone3~Zone4)では消費エネルギーのおよそ45%~75%が糖質由来となります。(図2)
(図2)運動強度とエネルギーの関係
(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002433.html &スポーツ栄養学P2)
グリコーゲン貯蔵量
このようにグリコーゲンは私たちが体を動かすのに超重要です。
グリコーゲンはデンプンや糖類などを含む食品を食べることによって体内に蓄積されますが、体内に蓄えることができる量には限りがあります。
なお、脂肪は1kgで7,000kalもあるので、体重を絞りまくっている人以外は燃料としての脂肪が不足することはありません。
グリコーゲンは人では肝臓の重さの6~10%、筋肉の重さの0.3~0.86%ぐらい蓄積されているとのこと。そして、貯蔵しているグリコーゲンは820~2,280kcal、一般的には1,500~2,000kcalとされています。
※糖質は1gで4kcalとされています
https://sugar.alic.go.jp/japan/view/jv_0106b.htm
各種文献で基本とされているグリコーゲンの貯蔵量は西欧人男性(おそらく体重70kgの設定)を元にしていると思われ、それより小柄な日本人男性、日本人女性はもっと少ないと思われます。
そこで、ざっくり日本人男性の平均体重を64kg、女性を53kgとして換算してみると、次の表のようになります(表1)。
(表1)貯蔵グリコーゲン量の推計
https://unit.aist.go.jp/riss/crm/exposurefactors/documents/factor/body/weight.pdf
また、蓄えているグリコーゲンを全部運動に使えるかというとそうでもなく、例えば脳は肝グリコーゲン由来のグルコースを血糖値として取り込んでエネルギーにします。そして、脳は、1日400kcal(100g)分消費するとされています。
つまり、肝臓は脳が使うグリコーゲンを1日分蓄えているだけなんですね。
肝臓のグリコーゲンが減ってくると、血糖値が下がり、脳を守るために運動を中止させようと、疲労感が増して運動の継続が難しくなります。
脳は、寝ているときも、起きているときと同じだけグリコーゲンを消費しているので、夕食を食べてから12時間もすると、肝グリコーゲンはほぼ空になっているという報告もあります。
なので、その日運動しなくても、朝ご飯に糖質を摂って、肝グリコーゲンを補充する必要があります。ましてや運動するなら、しっかりと朝ご飯を食べる必要があります。
また、筋グリコーゲンを使う場合でも、自転車ではエネルギーを生み出すのは主に脚・お尻などの筋肉なので、この部分の筋グリコーゲンが先に枯渇することになります。
一般的には60分~90分の中~高強度運動で筋グリコーゲンが枯渇すると言われています。
私の実感でも、無補給のきつめの持久走ペースのローラーだと1時間を越えたあたりで脚が重くなってきます(全く漕げなくなるのはもう少し先)。
なお、2時間以上のレースに出る場合、本番3日前の食事の総カロリーを変えず、炭水化物を増やすことによって、筋グリコーゲンの貯蔵量を1.2倍にできるとされています(カーボンローディング。
私は長いレースに出たことがないので経験がありませんが、機会があれば試してみたいです。
補給すべき最大量を考える
私の場合、私の場合、ローラー台のきつめの持久走ペース(L3)で1時間に消費できるのは600kcal。
そこで、強度高めのローラー練では、消費カロリーが600kcalを超えることが予想される場合に追加のエネルギー補給を考える必要があります。
実走での持久走ペースは頑張って走って1時間あたり400kcalといったところでしょうか。
従って、ローラーなら60分、普通の実走なら1時間半を超える時間の分の糖質を補給すればいいことになります。
体内に貯蔵されている糖質が枯渇すると、脂肪より先に筋肉が分解されてエネルギーとされてしまいます。筋肉は落としたくないので、運動中の糖質は足りないよりは余る方がよい。ということで、時間当たり最大消費量の600kcalに対応する糖質をとることを考えます。
前述のとおり、VO2Maxの65%(L3)の運動強度ではエネルギーの45%を糖質から得ています。
私の場合、1時間当たり600kcalのL3走では270kcalを糖質から使う計算ですね。
(もっと出力が出せる男性ならもっと使います。また、強度が上がると同じ消費カロリーでも糖質の消費量が増えます。ご自身の消費カロリーや強度から推定してみてください)
なお、エネルギー切れが起こらないと思われる1時間程度の運動でも運動前や運動中のエネルギー補給がパフォーマンス向上に有効との報告もあります。
私も45分程度の朝ローラーで運動前から運動中まで糖質を補給してみたところ、いつもなら脚が止まりそうになるところで耐えて、メニューを最後までこなすことが出来ました。
1時間未満の運動でも、朝食前で肝グリコーゲンが減少している場合など、脚が止まるような場合は、糖質補給を考えてもいいかもしれませんね。
吸収できる糖の最大量を考える
一般的には、持久系スポーツでは、1時間あたり30~60gの糖質(グルコース)をとることが効果的とされています。これは概ね、最大限吸収できる糖質(グルコース)量から来ています。
これに加え、果糖(フルクトース)は別系統のため、15~30g/時間も吸収できるので、これらを合わせると最大90g/時間の糖質を吸収することが出来ると言われています。
(吸収できる糖質の量を超えると、胃から先に流れなくなって胃がガボガボになったり、吐き気がしたり、小腸からの水分の吸収が抑えられて脱水になったりします。)
例によって、体格が小さめの人の場合を体重比率で考えると表2のようになります。
私で大体1時間あたりグルコースで34g、果糖(フルクトース)で17g、計51g・200kcalを目安に考えれば良さそうです。
(表2)1時間に吸収できる糖質量の推計
吸収できる糖を最大限補給して糖質が余ったら太るのでは?と思うかもしれませんが、ほとんどの場合、【総合的な消費カロリー > 補給できるカロリー】 となります。
消費カロリーの方が補給カロリーより多ければ、補給過剰で体重が増えることはありません(強度が低いゆるポタの場合は要注意)。
どうやって糖質を摂取するか:手軽なのはドリンクに混ぜる
止まって食べることができるなら、もしくは自転車に乗りながら食べることができるなら、エナジーバーでも、羊かんでもアンパンでも好きなものを食べればいいのですが、私は走りながら羊かんを剥いたり、アンパンを取り出したり出来そうにありません。
また、残った包装をポケットに戻すのもベタベタして抵抗があります。
固形物は胃腸にも負担が掛かりそうだし。。
そこで、まずは、お手軽にドリンクから補給することを考えます。
ドリンクでの補給のメリットは、エネルギー補給と同時に水分補給も出来ることです。
エネルギーと同様、運動時には水分補給も重要で、1時間あたり、250~500mlの水分補給が必要とされています。冬でも気づかないうちに汗をかいているので、喉が渇いていないようい感じても意識的に水分を補給する必要があります。
夏はさらに増えるし、掛水にもたくさん水を使います。
なお、人間が一度に吸収できる水分量は一度に200~250ml位。吸収されなかった分は尿として排出されてしまうと言われているので、ドリンクは5分(2口40ml位)~15分(6口120ml位)に1回など、頻度を決めて少しずつ飲んで、休憩時などにがぶ飲みする必要がないようにしましょう(※1口はだいたい20ml)。
https://www.shinkansai.co.jp/news/1142
ドリンクから栄養を補給する場合、甘すぎて口の中がベタベタして気持ち悪い、お腹がタプタプになってそれ以上飲めないなどという問題が発生することがあります。
また、水分補給の効率や塩分の補給も考える必要があります。
アイソトニック飲料とハイポトニック飲料
ドリンクの糖質や水分を体に取り込む際には、胃腸が吸収できる糖質の量と同時に、液体の浸透圧も問題になります。
ざっくりいうと、体液より濃い液体は吸収されにくく、体液より薄めの液体は吸収されやすいということです。
体液に近い浸透圧は、塩分が0.1~0.2%、糖質(グルコース)が約4~6%とされています(アイソトニック飲料:isotonic。iso=等しい、同一の)。
500mlだと糖質20~30g(80~120kcal)です。
スポーツ飲料は大体これくらいの濃度になっていると思います。
1時間あたりに吸収できる糖質(グルコース)の最大量60g(240kcal)と水分補給(1時間あたり250~500ml)を同時に行おうとすると、飲料の糖質濃度が高くなりすぎて下痢などの症状が生じる恐れがあります。効果的な水分補給とエネルギー補給を運動中に両立させるためにもドリンクはアイソトニック、もしくは濃度の濃いジェル等と水の併用で胃の中でアイソトニックにするのが良いと考えられます。
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000179.html
一方、これより薄いものは水分補給としては優れていますが、薄すぎるとエネルギー補給としては足りなくなってしまいます(ハイポトニック飲料:hypotonic。hypo=低い、不足)。
また、真水よりも、糖と塩分が含まれていた方が水分の吸収が早いとされています。
実際、水だけのボトルにすると、胃にたまって入っていかない感じがあります。
水分補給のためにも塩か糖だけでもいいから入っていた方がよさそう。
電解質を考える
汗をたくさんかいて走っていると不足してくるのはエネルギーだけではありません。
そう、汗とともに流れ出る塩分が不足して、脚が攣ってしまいます。
補給にはエネルギー、水分とともに、電解質を補う必要があります。
必要な電解質はいろいろとありますが、ライド中の補給は主に塩分(ナトリウム)を考えます。
ヒトは1時間に最大2ットルの汗をかくことがあるとされています。
汗の塩分濃度は一般的に0.4%と言われていますが、運動してさらっとした汗をかけるようになると0.3%程度になるとされています。
2リットルの汗で6gですね!
高血圧予防のため、塩分の取り過ぎには注意が必要ですが、運動時は別。
汗を沢山かく夏場の運動では、しっかり塩分補給しましょう。
経口補水液の塩分濃度が0.3%なので、ちょうどさらっとした汗くらいです。
水分を補給する際には水分量に見合った塩分を取ることを考えます。
糖質の質を考える
さて、必要なエネルギーの摂取量と濃度を決めたところで、どんな糖質を使うかを考えます。
図1にある似ように、糖質には様々なものがあります。
一般的に売られているのは表3のようなものでしょうか。
(表3)入手しやすい糖質の性質
色は大まかなグループ分け
組成の欄の説明
Gはグルコース(ブドウ糖)、Fはフルクトース(果糖)
グルコースとフルクトースは腸で取り込まれるルートが違います。グルコース単独だと1時間あたり最大60gですが、フルクトースは別途1時間あたり30g吸収できるので、併せて90g吸収することが出来ます。ここで問題となるのは浸透圧ですが、粉飴やクラスターデキストリンのように、グルコースが沢山つながった分子量の大きな糖を使うことにより、浸透圧を低くできます。
また、グルコースやスクロースなどは、長時間運動時の重要なエネルギー基質である脂肪酸の動員を抑制しますが、フルクトースはグルコース摂取と同程度に血糖値が維持される上にグルコース摂取の場合と比較して脂質利用率が高いとされています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm1949/48/3/48_3_343/_pdf
そこで、ドリンクにはGだけではなく、Fも含まれるように設計します。
(Fが含まれるのはスクロース(ショ糖/砂糖)、パラチノースとフルクトース)
GI: グリセミック・インデックス (Glycemic Index)の欄の説明
GIは血糖値の上昇度合いを示します。数値の大きいものほど速やかに吸収されて血糖値を上げ、エネルギーとして利用されますが、血糖値が上がりすぎるとインスリンが出て脂肪分解を抑制し、血液中の糖を細胞中に取り込むとともに、脂肪に変換しようとします。
通常の食事では血糖値の乱高下が避けられるGIの低いものほど肥満などの防止によいとされています。
一方、運動中の、ある程度筋肉中のグリコーゲンが消費された段階では、速やかに吸収されて筋肉で使用される高GIの糖は非常に有効です。
なお、運動前にGIの高い糖を摂取すると血糖値が上がり、脂質が利用されにくくなるので、運動開始直前に糖質を摂るのは避けるべきとされていましたが、最近では、運動開始30分前~直前に糖質を摂っても持久力は低下しないという報告が多勢を占めるとのことです。
分子量比の欄の説明
ハイポトニック飲料で説明した、体液に近い糖質の浸透圧約4~6%はグルコースで計算されています。
グルコースなら500mlに20~30gしか入れることが出来ませんが、分子量がグルコースの2倍のスクロースやパラチノースなら倍の40~60g入れることが出来ます。
(浸透圧は水に含まれるg数ではなく、分子が何個含まれているかで決まるから)
粉飴は3~10倍入れることができるし、クラスターデキストリンは平均分子量がグルコースの2500倍と大きいので無限に入れられそうですが、さすがに水に溶ける量には限度があるので、無限には入れられません。
また、浸透圧に寄らず、一定時間に腸で吸収できる糖の量には限度があるので、それ以上は入れられません。。
甘味度の欄の説明
そもそも、私がなぜ、最初に使っていた、どこでも買えて、お手軽で値段の割に優秀な組成のポカリの粉から浮気してドリンクの研究に走ったかというと、ポカリの粉は規定量で作ると甘いんですよ。
甘すぎて口に残る感じがするので、ポカリの粉を半分にして、甘さの少ない粉飴で糖質量を調整し始めたんです。
GI値が同じような糖質から選ぶとすると、砂糖は安いのですが、甘いので却下ですね。
粉飴やマルトデキストリンが使いやすいと思います。
果糖(フルクトース)は1時間あたり吸収できる糖質の最大量の60gの外枠と考えることが出来ますが、甘いので、あまりたくさん入れると甘くて飲みにくいと思います。
ボトルの運用
糖の性質がわかったので、いよいよオリジナルドリンクの設計をしてみます。
自転車で携帯できるボトルは、一般的には500ml、私が使っているCAMELBAKのポディウムチルはロングボトルが710ml、ショートボトルが620ml、サーモスの金属水筒が500mlです。
1時間あたり500mlのドリンクを飲むとして、吸収できる糖質の最大量と、ハイポトニック(等張)となるグルコース量、適正塩分量を表4に示します。
(表4)ボトル容量と入れることができる(=吸収できる)糖質の量
表5が具体的な配合量と、関連数値です。
(表5)ボトルデザイン
ボトルの飲料を作るときに、いちいち粉の重さを量るのは面倒なので、常に1単位分の計量スプーンを入れておき、その倍数で調整できる範囲で設計しました。
(1)掛水が必要ない場合
真夏以外の実走やローラー台では掛水は必要ないので、水分補給とエネルギー補給を同時に行うことを考えて水で走れる時間を走るのに必要なカロリーを摂ることにしました。これでボトル2本で2時間30分のL3走まで対応できるはず(表が見にくくてすみません)。
実走でこれ以上走るようなら、CCDの粉等で追加を検討します(残り距離などで何を使うか判断)。
分子量の大きさを考慮した「推定グルコース換算浸透圧」を見ると相当余裕を持ったハイポトニック(低張)になっていると思われます。吸収できる糖質量からも余裕があるので、エネルギーがもっと必要な人や1時間に吸収できる糖質が多い人はもっと入れられそうですね。
(2)金属ボトル+掛水の場合
真夏は温度を低く保つための金属ボトルと掛水用のロングボトルで考えます。
走行時間が1時間30分を越えそうなら2倍濃度にします。
金属ボトル×2倍濃度は1時間に吸収できる量を超えているので、水と交互に口に入れ、2時間程度掛けて飲むようにします。
真水のロングボトルはなくなったら補充。半分掛けたとして、ロングボトル1本あたり岩塩タブレット3粒を金属ボトルに追加するか、そのまま食べる。
金属ボトルがなくなったら、CCDの粉等で追加を検討します(残り距離などで何を使うか判断)。
(3)既存のスポーツドリンクの粉を利用するなら
泊まりがけでライドに行く場合や、ロングライドの途中で作り足す場合など、お手製の粉を持って行きにくい場合は既存のスポーツドリンクの粉を利用するのがいいと思います。
表6にエネルギー補給に良さそうなスポーツドリンクの粉をまとめてみました。
(表6)手軽に購入できるスポーツドリンクの粉
CCDは分子量の大きなクラスターデキストリンで浸透圧を調整し、ハイポトニックなのにさすがのカロリーです。
効果の早いブドウ糖と効果がゆっくりのCCDで組成もなかなか良いと思います。
味もあさっさりしていて口にネバネバが残ることもない。さすがお値段高いだけのことはありますね!
ポカリスエットは糖質の組成にこだわりがありそうで、糖質量は多いけどデキストリンで浸透圧を調節して吸収は良さそうです。
価格の範囲で出来ることをやってそうで、なかなか優秀ですが、規定量で作ると私には少し甘くて口がベトベトスるんですよね。
アクエリアスはデキストリンが入っていないので浸透圧が調節できないことから、入れられる糖質量に制限があり、カロリー控えめで糖質補給としてはイマイチかと思います。
表7にCCDだけでドリンクをダブルボトルで運用した場合の走れる消費カロリーと走行時間の目安を記載しています。
(表7)CCDの運用例
CCDはオリジナルドリンクより糖質量が少ないので、ボトル2本で水は2時間40分走れるのに、糖質はL3走で2時間15分分しかありませんね。
その後、1袋追加する毎に40分位走れる計算ですが、40分で500mlの水を飲むのは辛いので、持続可能でないかもしれません。別途、ジェルや羊羹などの追加補給を考えてもいいかもしれませんが、胃の中で糖質が濃くなってしまうので吸収できるか不安が残りますね。
L2走なら1袋追加毎に1時間40分位走れるので、体力が許せば無限に走れそうです。
(もちろん、体力が許さない)
(4)コンビニや自販機で飲料を買うなら
追加の粉のドリンクの素を持って行かない場合、コンビニや自販機で飲料を買うことがあるかもしれません。
まず、注意して欲しいのは、走行中にあまり水分を摂らずに、コンビニや自販機の飲料で一気に水分とカロリー補給をするのは避けた方がいいということです。
というのも、人間が一度に吸収できる水分量は140ml程度と言われていて、休憩中にがぶ飲みしても、尿として排泄されてしまうとのこと。
買った飲料は適宜飲んで残りはボトルに移して走りながら少しずつ飲みます。
表8に代表的な飲料の成分を調べてみましたのでご参考まで。
(表8)市販のスポーツドリンク等の成分
全体的にスポーツドリンクは糖質補給としては物足りないですが、ジェルや羊羹などで糖質補給できるなら、水分・塩分補給としては良さそうです。中ではポカリスエットが一番カロリーがあります。カロリーにこだわらないならアクエリアスでも、グリーン ダ・カ・ラでもお好きなものを。
コカ・コーラなどのジュースは糖質は多いのですが、今後は浸透圧が高すぎて吸収が悪そう。
また、ソルティーライチ以外は塩分は摂れないと思います。
ライド前の食事
寝ているだけで肝グリコーゲンは半分になってしまうので、レースなど気合の必要なライドの前の朝食や昼食は糖質を十分に摂る必要があります。目安としては、体重1kgあたり1.5~2gの糖質(ご飯をお茶碗で1~2杯。糖質80g~160g、320~640kcal)を摂ると良いようです。
また、最後の食事からライドまでに時間が空くようなら、1時間に1度くらい、ジェル、おやつなどで体重1kgあたり1gの糖質を補給すると良いとのこと。
ライド終了後の食事
ドリンクで吸収できる糖質の最大限を補給しても、吸収できる糖質のエネルギーは1時間あたり240kcalとされています。
体格が小さければもっと少ないですね。
そして、消費できるカロリーは私で1時間あたり600kcal位。
補給を気にしなければいけないようなライドでは、最大限頑張って糖質を摂っても、消費カロリーと補給カロリーの収支を合わせることはできません。
(ゆるポタや、途中で食事を摂る場合は別。ただし、休憩中に食べ過ぎるとお腹が重くなってその先の走りに影響します。休憩時の食事は糖質メインとし、食べ過ぎないように注意しましょう。)
糖質をしっかり摂っていると意外とおなかが空かないし、頑張りすぎると食欲がなくなることもありますが、翌日も運動する場合、肝グリコーゲン、筋グリコーゲンを満タンにしないと、疲労感で、強度を上げた運動が出来なくなります。
一方、運動しておなかが空いたからと言って、運動した分以上に食べると体重が増えてしまうので、注意が必要です
まず、ライド後速やかに、糖質と、運動時に傷ついた筋肉を修復するためのタンパク質を摂ります(プロテイン可。
(表9)ライド直後の補給量
体重1kgあたり | 53kgなら | 64kgなら | 70kgなら | |
糖質 | 0.8g | 42.4g (170kcal) | 51.2g (200kcal) | 56g (224kcal) |
たんぱく質 | 0.4g | 21.2g (85kcal) | 25.6g (100kcal) | 28g (114kcal) |
さらに、夕食時にもカロリーが過不足しないように、糖質、タンパク質を摂りましょう。
※糖質とタンパク質を同時に摂ることによって筋グリコーゲンの回復が早くなります。
枯渇した筋グリコーゲンを24時間でほぼ元のレベルに回復するには、概ね1日の消費カロリーからタンパク質を体重kgあたり2g食べた残りを、なるべく炭水化物リッチな食品で埋める感じです。
一度に食べきれない場合は、1時間あたり糖質を1.0~2.0g/kg体重を目安に、総カロリーに注意しながらこまめにおやつを食べるのもいいかもしれませんね。
タンパク質と糖質を主にした普通の食事を食べていれば、脂質も適宜補給されるので、脂質についてはさほど心配することはありません。脂質はカロリーが高いので、総カロリーを考えると、脂質を取りすぎると糖質を摂る余裕がなくなるので、油ものはなるべく控えた方がいいでしょう。
ビタミン(特にB)、ミネラル(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄など)も運動によって消費されたり、汗などとして流れたりしているので、補給に気をつける必要もあります。食事だけではビタミンBが足りない場合も多いので、たくさん乗った日はビタミンBのサプリメントを飲むことも有効です。
運動したらビールがおいしいのはわかりますが、翌日も運動する場合はビールなどのお酒は控えめに。アルコールを分解するのに水が必要なので、脱水気味になりますし、アルコールを分解するために肝臓などもフル活動するので心拍も下がらず、疲労も抜けません。
たまに行くロングライドで、もう脚が終わった!と思っても、止まってアイスを食べると1時間位脚が復活することに気づきました。そして、普段の実走でも、脚が止まってきたら羊羹などを食べるようにしたところ、食べると脚が復活するんですよね。
そこで真面目に糖質を研究しようと調べたのをまとめたのがこの記事です。
この記事で作ったレシピのボトルのおかげで、きつめの持久走でエネルギー切れを感じることがなくなり、これまで途中で切れていたZwiftのグループライドに2時間以上ついていけるようになりました。
実走でも最後までしっかり踏める実感があります。
ただし、お腹が空かないので、休憩で食べなくなったのが弊害ですね。。。
ライドのお楽しみが。。。