加齢に抗う:アンチエイジングには高強度インターバルをやろう!

Zwiftで行った1分1分のインターバル 運動/自転車

お年寄りというと、年齢を重ねるにつれ、動作が遅くなり、身体の可動範囲も狭くなり、だんだん身体が動かなくなっているイメージがあるのではないでしょうか?

一方で、90歳過ぎてもトライアスロン完走したり、マラソン完走したりする一般人からの外れ値の人もいるわけです。私たちも、さすがにそんな外れ値を目指すのは現実的ではないかもしれませんが、できる限り長く自立して動ける身体を維持したいですね。

運動はダイエットにも効果的ですが、元気に動ける身体作り、アンチエイジングにも効果的ということがわかっています。

その中でも最も効果的な手法は、中程度の運動(LT走、ペース走)に加えて高強度インターバルを取り入れること。歳を取ってくると、LSD(低強度長時間)にシフトしがちですが、高強度インターバルをしっかりと取り入れるのが肝です。そして、自転車は故障のリスク少なく高強度インターバルを取り入れることが可能な最強のアイテムです!

注意!!

ここで書いていることは、一定程度の運動を続けてきた人が年を重ねても動ける身体をめざすための情報であり、今まで運動してこなかった人が何をするべきかということではありません。運動経験のない中高年がいきなりハードなインターバルなどの運動をすると、故障や怪我、最悪心臓発作などの危険性がありますので、緩い運動からステップを踏んで取り組むようにしてください。

また、健康診断の結果などを見て、不安がある場合はどんな運動ならして良いか医師に相談してください。さらに、睡眠・食事・休養・水分補給・気温の変化への対応など、体調管理には万全を期してください

強度を上げる部分でしっかり上げるにも練習が必要です。
できれば、若いうちからしっかりと運動習慣をつけておいて、それを生涯続けられるようにしておくといいですね。

You aren’t old until age becomes your excuse (Fast after 50)
齢をいいわけにし始めるのが年寄りの始まり(意訳)。
2021年に読んで、短時間高強度のローラー練を続けると決めて、私の今があります。
※知らない間に日本語版が出てたが、日本語版高い(7,020円:2023年10月25日現在)。。。

英語が読めるなら英語版の方が全然安いです(2,365円:2023年10月25日現在)。。

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身体が動かなくなってくることの要因

歳を取ると身体が動かなくなってくるようだというのは、親などの先人を見ていてもわかりますね。
これを分解すると、次のようになります。

身体が動かなくなる直接的要因
  • 筋力の衰え
    • 瞬発力の衰え
    • 持久力の衰え
    • インターバル耐性の衰え
  • 神経系の衰え
    • 運動神経(思い通りに筋肉を動かす神経)の衰え
    • 感覚神経(触覚・視力・聴力など)の衰え
    • 反射神経(感覚神経-運動神経の伝達速度)の衰え
  • 心肺機能の衰え
    • 心臓の衰え(最大心拍数の低下、吐出量の低下、運動に対する対応力の低下)
    • 血管系の衰え(動脈や細動脈の硬化による血圧の調整不全、血流量の低下)
    • 呼吸器系の衰え(換気量の低下)
  • 柔軟性の低下(靭帯や腱の弾性の低下、筋肉のこわばり)
  • 骨密度の低下
  • 免疫系の衰え

加齢に伴う体の変化 – 24. 高齢者の健康上の問題 – MSDマニュアル家庭版 (msdmanuals.com)
心臓と血管への加齢の影響 – 06. 心臓と血管の病気 – MSDマニュアル家庭版 (msdmanuals.com)

身体が動かなくなるのは加齢が原因なのか

これを見ていると思い当たる節がありすぎて暗い気持ちになってきますが、これは加齢という自然の摂理であり、避けようがないのでしょうか?少しでも食い止めることはできないのでしょうか?

例えば、老眼は年齢とともに、水晶体の厚さを変える毛様体という筋肉が衰えてピントの調整ができなくなるとともに、水晶体が硬くなることから起こります。毛様体の筋肉はある程度鍛えることができますが、現在のところ水晶体が硬くなることを防ぐ方法はなく、老眼を防ぐことはできません。
※老眼鏡を使えば日常生活に困りませんし、多焦点眼内レンズを入れることで改善は可能です。将来的にはもっと良い技術が開発されそう。

このように、身体が動かなくなる直接的な要因も、ある程度仕方ない変化と対策を取ることが可能な変化に分類できます

そして、対策を摂ることが可能な変化は概ね鍛えることが可能な筋肉が関係しているもので、これは運動することによって維持・向上することが可能です。

また、動脈硬化なども運動により予防できることがわかっています。さらに、靭帯や腱の柔軟性を含めた身体の柔軟性、骨密度、免疫系の働きも運動により維持されることがわかっています(下図○印・青色)。
一方、神経系は、運動神経は運動することによってある程度維持できると考えられますが、感覚神経の方は運動によって維持されるとは考えづらいです(下図△印・赤色)。

身体が動かなくなる直接的要因のうち○ある程度対処可能なもの、△対処不能なもの

・筋力の衰え
  ○瞬発力の衰え
  ○持久力の衰え
  ○インターバル耐性の衰え
・神経系の衰え
  ○運動神経(筋肉を動かす神経)の衰え
  △感覚神経(視力・聴力・味覚・嗅覚・触覚など)の衰え
  ?反射神経(感覚神経-運動神経の伝達速度)の衰え
・心肺機能の衰え
  ○心臓の衰え(最大心拍数の低下、吐出量の低下、運動に対する対応力の低下)
  ○血管系の衰え(動脈や細動脈の硬化による血圧の調整不全、血流量の低下)
  ○呼吸器系の衰え(呼吸筋の減少による換気量の低下)
○柔軟性の低下(靭帯や腱の弾性の低下を含む)
○骨密度の低下
○免疫系の衰え

こうしてみると、意外なほど運動でカバーできることが多いことに驚くのではないでしょうか。

欧米では中年以降になると運動習慣のある人の割合は少なくなり、65歳を過ぎて定期的に運動している人は10%程度と言われています。つまり、加齢に伴って当然起きると思われていることは、普段運動をしない人々が高齢になった場合の体験に基づいているのかもしれません。

実際、若い時から何十年もサイクリングを続けていて、現在も月に640キロほど走っているという年齢55~79歳の男女数十人を対象に行ったイギリスの調査では、反射神経や記憶力、バランス能力や代謝関連の数値はいずれも30歳並みとの結果が出たとあります。また、免疫を司るT細胞や他の免疫細胞、T細胞を分泌する胸腺を萎縮から守るホルモンのレベルも高かったとのことです。
https://toyokeizai.net/articles/-/217213

もし人類全員が運動するという状況なら、「老化」という概念は違ったものになるかもしれませんね。

私は常々自転車(ローラー台)は風邪から骨折まで万病に効く万能薬と言っていましたが、運動はアンチエイジングまでできる、スーパー万能薬と言っても過言ではありません。
注)運動によるアンチエイジングの効果は完全に老化の進行を止めるものではなく、老化を遅らせるという効果です。

継続的な運動を妨げる年齢的要因

ということで、運動をしていれば○印の部分の衰えや低下が最小限に抑えられ(あわよくば向上し)、年を取っても動ける身体が維持できると考えられます。でも、私の実感しているところでもありますが、実は加齢に伴い、運動を継続したり、辛いインターバル練に取り組むことそのものが難しくなってくるんですよね。
むしろ、こちらの方が問題。

継続的な運動を妨げる要因
  1. 回復力の低下
    • 回復力が低下することにより、運動の積み上げが難しくなる
  2. モチベーションの低下
    • レースなどの成績やトレーニング内容が伸びなくなったり、低下したりことによりモチベーションが低下する
    • 加齢とともに新しいことに挑戦したり、限界を突破することへの興味が薄れる
    • 加齢に伴い怪我や故障の可能性が高まるため保守的になる
  3. 恒常的な健康問題
    • 腰や膝、肩が痛い、座骨神経痛になる、内臓系の病気になる、不整脈・めまい・立ちくらみなど健康に恒常的な問題が生じてトレーニングの継続が難しくなる

回復力の低下

 運動の継続を妨げる最大の要因は怪我・故障や仕事などの生活環境ですが、56歳現在の感覚では、一時的な中断であれば、モチベーションさえあれば、運動を再開すると、時間がかかっても、ちゃんと動けるようになります
いくつまでこの回復力が維持されるのか不明ですが、私は年齢の割には怪我や病気からの回復力があると感じています。運動を継続していると怪我や病気からの回復力も維持されている可能性大

運動の継続のためには、怪我・故障はできるだけ避けたいですが、一時的な怪我や故障、病気、仕事などで運動が中断されてしまっても、気を取り直してまた運動を積み上げましょう。

回復力の低下による積み上げ不足については、モチベーションさえあれば運動メニューの組み立て栄養・休養(ストレッチ・マッサージ含む)の工夫でなんとかなる部分もあります。このあたりはこのサイトのメインテーマですね。

モチベーションの低下

そして、真に運動の継続を妨げる最大の要因はモチベーションが上がらないということです。人間、進化生物学的に言って、本来は運動なんてしたくないんです。さらに、脳科学から言っても、人間、年齢が進むと新しいことに興味がわかなくなってきます

それなのに、なぜ継続的に運動する必要があるのか、新しいことにチャレンジする必要があるのか。自分のライフデザインそのものであるということをしっかり腹落ちさせる必要があります(自分に言い聞かせてます)。

10年以上もメニューを組んだ運動をしていると、パワーなどの指標が伸びなくなってきます。仕事やケガ、病気で少しでも練習量が落ちるとてきめんに指標が落ちます。
若いライバルにレースや練習でついていけないと、練習不足や練習の工夫不足を棚に上げて、つい、年齢を言い訳にしてしまうかもしれません。

モチベーションは放っておくと加齢とともに低下するものということを念頭に、これに流されないように、なぜ運動が必要なのか自分に腹落ちさせて、なんとかモチベーションを維持しましょう

恒常的な健康問題

モチベーションがあっても運動が続けられなくなってしまう最悪の事態、「恒常的な健康問題」についてはなかなか避けようがなく、なってしまったら医療に頼るほかありません。私もそうならないように、日ごろから健康に気を付けて、身体のメンテナンスにも手間をかけ、気になることがあったら早めに医師等に相談し、あとは天に祈るのみ。。。
(これについては今のところ書ける知見がありません🙏)

健康寿命を延ばすのための運動

ということで、運動の有用性がわかったところで、どんな運動がいいのか考えてみたいと思います。

厚生労働省が策定している「第二次健康日本21」で「日常生活に制限のない期間の平均」である「健康寿命」を伸ばすためには、「栄養・運動・休養・口腔環境の維持が必要」とされていましたが、新しい「第三次健康日本21」でも、この項目は変わりません。
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001070911.pdf

そして、ここで目標とされている運動は、毎日8,000歩歩くことと、1回30分以上の運動(強度等不明)を週2回以上とされています。

歩数が増えると疾病罹患率や死亡率が明確に減ることが確認されているとのこと。
将来の生活習慣病発症や社会生活機能低下を防止するためには、20~64歳で8,000歩、65歳以上で6,000歩を目標に歩くのがよいようです。

運動の方は強度は明記されていませんが、元になっている論文を読むと、強度の高い運動の方がより効果的とされています。

動ける身体作りのための運動

前述の健康寿命を延ばすための運動は、現状の日本人の平均データから、無理のない目標を設定しています。本当はもっと高い目標を設定したいんだけど、まずはここを目指しましょうという感じですね。

ということで、健康日本21が設定している運動目標をもう少し推し進めて、動ける身体を維持するために、最も効果的な運動がどのようなものなのを探っていきたいと思います。

トレーニングを構成する要素

トレーニングを構成する要素は、時間・頻度・強度の3要素です。
ここで、時間×頻度=ボリューム(≒量)とします
自転車で言えば、TSSを積めばよいのですが、同じTSSを積むためには、
低強度でボリュームをたくさん乗る
高強度でボリュームを少なく乗る
という選択肢があります。

Faster after 50では中強度で中程度のボリュームに高強度の運動を混ぜるのが良いとされています。
私の実感でも平日の高強度インターバルに加えて週末に長め(ゆるすぎないペースで2~4時間程度)に乗ると調子が上がってきます。
一方、週末の長めのライドが減ると、高強度インターバルを続けていても調子が落ちてきます。

トレーニング理論は、若い人にも年寄りにも当てはまります。
具体的なトレーニングの組み立てはこちら↓をご覧ください。

VO2Maxを落とさないためには高強度トレーニング

「Fast after 50」によると、運動パフォーマンスを示す3つの要素のうち、加齢によって最も落ち込みが多いのは、VO2Maxとのことです。でも、高強度の運動を続けた人のVO2Maxの落ち込みはほとんどなかったとのこと。

運動パフォーマンスを示す3つの要素
  1. 有酸素容量(≒VO2 max、5分間最大パワー)、
  2. 乳酸閾値(≒FTP、1時間最大パワー)、
  3. 燃費効率(エコノミー。どのくらい効率的に酸素を運動エネルギーに変えられるか)

VO2Maxを維持するためには、高強度インターバル(L5~L6、30秒~3分)が効果的です。

高強度インターバルは辛いので、歳をとってくると、つい、緩くて時間が長い運動にシフトしがちですが、これが老化を防止する!と意識してVO2Max以上のインターバルを行い、心拍も追い込みましょう。

高強度インターバルを行うと、身体に負担がかかるので、一緒に十分な休養、栄養影響補給を行いましょう。その際に、高強度インターバルは成長ホルモンの分泌を促します
高強度インターバルで分泌させた成長ホルモンの効果を最大限に得るためにはライフスタイルを見直して、しっかりと寝ることを心がけましょう。(併せて読みたい:睡眠)

さらに、高強度インターバルはVO2Maxだけではなく、乳酸閾値やエコノミーを向上させることもわかっています

筋肉量を減らさないためには筋トレとプロテイン

「Fast after 50」によると、60歳の男性は25歳に比べて10kg、女性は5kgも除脂肪体重(主に筋肉)が少なくなるとのこと。また、運動しないと、筋肉は40歳頃から減り始め、70歳頃まで毎年1%弱減って70歳には40歳に比べて筋肉量が24%減り、その後毎年1.5~2%ずつ減って80歳頃にはさらに15%から20%の筋肉がなくなってしまうようです。
何もしないと、80歳では筋肉量が40代の半分になってしまうんですね!

筋肉の減少は主に成長ホルモンや性ホルモンなどの筋肉の維持・増強に関するホルモンが減少することによって起こります。

しかし、70-85歳でも筋トレを行うことによって、筋肉を増やすことができることがわかっています。筋トレに併せてプロテインを摂取するのが効果的とこのこと。
歳を取ればとるほど、必要なタンパク質量は増えるようです。

私はなかなか筋トレが続かないのですが、環境が許すようになったら絶対筋トレもします!<自分に言い聞かせている

コラム:食習慣の改善と運動は認知症も予防する

この記事では、活動できる身体作りをテーマにしましたが、私にとって高齢化による認知症も大きな脅威です。
福岡県と愛媛県のある町で20年程度、65歳以上の住民を対象にして認知症の有病率を調べたところ、有病率は年々上昇し続け、最後の調査(福岡県2012年、愛媛県2016年)ではどちらも10%を越えています。
75歳以上の後期高齢者に限ると認知症の有病率は全体の5割近くにも上るとされています

アルツハイマー型の認知症はこのうち半分近くを占めますが(残りは脳血管症と原因不明)、アルツハイマー型の認知症は、原因も治療法も十分には明らかになっていません。

しかし、ニューヨークに住む平均77歳の高齢者の生活習慣とその後のアルツハイマー型認知症の発症率を調べたところ、運動習慣も食習慣も良かった人は3割弱しかアルツハイマー型認知症を発症せず運動習慣も食習慣も悪かった人は4割以上がアルツハイマー型認知症を発症していたという報告があります(運動、食事のどちらかが良い人はその間)。

やはり、適切な運動、食事、休養は生きることの基本ですね!

※良い運動習慣とは、強度の高い身体活動を週に1.3時間以上又は、中程度の身体活動を2.8時間以上、もしくは低強度の有働を週に3.8時間以上行った場合、もしくはこれらが組み合わさった場合。
(「行動栄養学とは何か」佐々木 敏 著)


たまに行くロングライドやヒルクライムを楽しく走りたいから続けられる

私は週4回自転車に乗るという目標を立てて、2014年9月から、母が亡くなった1週間を除き、9年以上継続しています(2023年10月現在)。

この間、仕事が忙しくて、証拠作りのために5分だけローラーを回した日などもありますが、なるべく時間を取って、平日は全部で45分程度の高強度インターバルと乳酸閾値練、週末は2時間程度の実走またはローラーに取り組んでいます。

ダイエットと基礎体力の維持・向上が自転車の目的の私が、なぜここまで頑張って自転車の練習を続けているのか、最後に、自分のためにまとめておきたいと思います。

GWや夏休みなど、泊まりがけで旅行に出かけて、知らないところでロングライドやヒルクライムなどにチャレンジするのはとても楽しいです。
が、一定の走力がないと、辛いだけで楽しめないんですよね。。。

坂はゆっくり上れば辛くないからと言われても、走力がないと、どんなにゆっくり上っても辛いんです!ゆっくりすぎると脚をついてしまうような坂もあります。
楽しくサイクリングするためには、一定の走力の維持は重要

私は54歳のとき、コロナもあってレースに出なくなり、ローラーメニューを持久系に振りました。すると、本当に走力が落ちたんですよね。。。で、Fast after 50 を読みなおして、しっかり上を頑張る方針に戻したら、ちゃんと戻ったんです。
56歳を超えた今年もスキーシーズンの冬に落としたVO2Maxが秋には戻ってきました。
ガーミン先生はフィットネス年齢は20歳ですとか言ってます。
いつまでこれが続けられるのか、チャレンジですね。。。

でも、いろいろなトレーニング本でも推奨されている筋トレはできてないです。
主な理由はジムに行く時間が作れないから。
あと、筋トレの必要性を感じるほど競技成績にこだわってないから。

働き方やライフスタイルが変わったら、目標などをもう一度考え直そうっと。

もう手が離れつつある娘二人と夫と暮らしています。残業あり、出張ありのフルタイムのお仕事。ダイエット目的で自転車に乗って得られたものは痩せただけではありませんでした。

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