ダイエットのためには、定期的に自転車に乗るのがよいのですが、年齢を重ねてくると、 詰めて乗ると、回復が追いつかなくなってきます。
走力の維持や、カロリー消費のためには、週3~4回は自転車に乗りたいところですが、このためには疲労の管理がとても大切となります。
そして、このためには次のポイントをすべて適切に行う必要があります。
全てが奥が深く、完全な正解もないので、研究すると非常に楽しいです。
ここでは、これらを考えられる範囲で適切に行った上で、さらに上乗せでできる対策として、サプリメントについてまとめてみます。
なお、サプリだけでどうにかしようというのは全然だめで、上の4点をきちんと行った上でさらに何かというときに初めて考えてください。
疲労とは
「すべての疲労は脳が原因」によると、激しい運動の時に起こる疲れは筋肉そのものの疲労ではなく、多くは脳(自律神経)の疲労とのこと。
自律神経は、交感神経、副交感神経が働く割合を決めていて、生体機能の調整に重要な役割を果たしています。健康関係のどんな本を読んでいても必ず出てくるキーワードですね。
さて、自律神経に疲労が蓄積すると、あたかも筋肉疲労を起こしたかのようなシグナルを出して運動をやめさせようとするらしい。
そして、自律神経の疲労の原因となるのは、脳内で神経細胞を攻撃している「活性酸素」とのこと。
活性酸素の攻撃を受けやすいのは、細胞内で酸素からエネルギーを生み出しているミトコンドリアと、常に働いている自律神経の細胞です。
この活性酸素の大部分は抗酸化酵素で無害化されるのですが、抗酸化酵素の働きは加齢とともに低下するので、加齢とともに、自律神経の攻撃が無害化できなくなってきて、疲労回復が遅くなるんですね。
もう少し詳しく調べると、脳内の神経細胞などが活性酸素で酸化されると、疲労因子のFF(Fatigue Factor)というタンパク質が増えるとのこと。
人間の身体はよくしたもので、活性酸素に対する抗酸化酵素と同じように、疲労因子FFに対して、疲労回復因子FR(Fatigue Recovery Factor)があって、疲労因子を中和しようとするらしいです。
そして、疲労回復因子FRも加齢とともに反応性が低下するとのこと。
※FFは特定の物質ではなく、機能性を持つたんぱく質の総称。
eIF2α(真核生物翻訳開始因子α)がリン酸化酵素によりリン酸化して、炎症性サイトカインを産生して疲労感を発生させる。これがFFの一つ。
そして、脱リン酸化酵素によりリン酸が外れると疲労感がなくなる。この脱リン酸化酵素がFRの一つ。
(東京慈恵会医科大学ウイルス学講座「最新!疲労・ストレス講座」)
なお、この疲労回復因子FRは入眠時の深いノンレム睡眠のときに働くので、疲労回復にはまず質のよい睡眠というのはこれが理由のようですね。
疲労に効く食品成分:イミダゾールペプチド
前述の「すべての疲労は脳が原因」によると、疲労回復に効果があるとされていた23種類の成分について、疲労回復の効果を調べたところ、疲労回復に最も効果的というエビデンスが得られたのが「イミダゾールペプチド」だったとのこと。
イミダゾールペプチド、カルノシン、ベータアラニンの関係
イミダゾールペプチドは、イミダゾール基を持つアミノ酸の総称です。
ベータアラニンとヒスチジンというアミノ酸で構成されるカルノシンと、ベータアラニンと1-メチルヒスチジンというアミノ酸で構成されるアンセリンがあります。
そのうち、カルノシンは鶏胸肉中に見られる、強い抗酸化性を持つ物質です。
※論文:新規抗疲労成分イミダゾールペプチド
口から入ったイミダゾールペプチドは、消化されてベータアラニンとヒスチジンや1-メチルヒスチジンに分解され、血液にのって筋肉や脳の組織に運ばれてイミダペプチドに再合成され、活性酸素を中和して、疲労を感じにくくします。
イミダゾールペプチド、カルノシン、ベータアラニンのどれを選ぶか
前述の「すべての疲労は脳が原因」によると、イミダゾールペプチドが疲労軽減の効果を発揮するのは1日200mg必要で、400mg取ると、さらに強い疲労軽減効果が期待できるとのこと。
イミダゾールペプチドはブロイラーの胸肉におよそ350mg/100g含まれているのですが、毎日400mgのイミダゾールペプチドを摂ろうと思うと、毎日115gの鶏肉を食べないといけません。
ある意味、毎日115gの鶏胸肉でいいともいえますが、毎日じゃ飽きちゃいますよね。
そこで、サプリで補充することを考えるのですが、ネットで検索すると、イミダゾールペプチド(イミダペプチド)はほぼ日本製しか見つからず、ややお高めな感じ。
一方、カルノシン(L-カルノシン)は海外メーカーのものも豊富で、割安です。
ということで、3年以上、カルノシンを愛用していたのですが、アミノ酸の記事を書いているときに気になったのがベータアラニン。
国際スポーツ栄養学会(ISSN)のパフォーマンス向上に「効果が高く安全である」と分類されている物質の中に、私がドーピングと同じくらい効果があるだろうと思っているクレアチンとともに書かれていたのがベータアラニンなんです。
(BCAA、シトルリン、EAAA、HMB、タウリンなど人気の成分は「効果があるという一定の根拠があるもの」と一段低い評価)
カルノシンはどうせベータアラニンとヒスチジンに分解されて目標となる組織に運ばれ再合成されるし、体内にあるベータアラニンの量は限られている一方で、ヒスチジンは体内に豊富に存在するので、補充するならベータアラニンだけでよいという考え方のようです。
ベータアラニンの摂り方
ベータアラニンの補給と運動パフォーマンスの関係について検討したシステマティックレビューによると、ベータアラニンを1日あたり3.2g~6.4gを4~12週間摂取することで運動パフォーマンスの改善が確認できたらしい。
カルノシンをやめてからパフォーマンスが落ちてくるまでに2週間程度掛かったことを考えても、運動したときだけではなく、継続的に摂取するのがよさそうですね。
摂取量が0.4g程度で良いとされているカルノシンに比べてずいぶん多いですね。吸収率が悪いのか?
ベータアラニン0.8g以上摂ると、5~10分してから、60分~90分、手のひらをはじめとする肌にピリピリ感を感じる、ベータアラニンフラッシュという現象があるが、これは有害ではないと書いてありましたが、2g飲んだら、まさにいろいろなところの皮膚がピリピリというか、チクチクというか、かゆい感じがあります。
購入したのはこちら↓
袋には1日に1~2回、1~2gを目安に摂ることと書いてあったので、朝晩2g、計4gを摂ってみたところ、効果が出るまで数日~1週間程度は掛かるだろうと思ったら、すぐに次のような効果が!
- 2日目:スキー翌日のローラー台で、通常なら脚が重いところ、やけに調子いい
- 3日目:スキー(土)、ローラー(日)からの月曜日の駅までラン・駅からランのタイムが、PCや本を背負っていつもより重いのに、この数ヶ月見たことないタイムだった。身体の芯からピカピカに元気な感じ。
駅までラン・駅からランのタイムは疲労をよく表していて、最近は夜の駅からランは最初から走るのを諦めて歩いたり、途中で歩きを入れたりするほどでしたが、スキー明けの今回はこの数ヶ月でもっともよいタイムという。。。
これは、私的には、クレアチンに続く、ドーピング並みに効果がある物質かもしれん。。。
ベータアラニンの過剰摂取、副作用
これだけ効果があると、過剰摂取や副作用が心配になってきます。
英語含め、ネットをだいぶ検索しましたが、ベータアラニンフラッシュ以外の健康被害が出るという情報は得られませんでした。
懸念事項
今回の記事を書いていて生じた疑問が、「疲労」と「疲労感」の関係。
身体に疲労があるのに、疲労感だけマスキングして頑張るのは、過労(うつ、慢性疲労症候群など)につながるので、避けなければいけません。
疲労感のマスキングは、成功報酬(ドーパミン)、アドレナリン、カフェインなどで起こるのですが、このようなものに頼って頑張っていると、そのうちドーパミンやアドレナリンを産生する機構が疲労してきて、疲労感をマスキングできなくなり、過労が表にでてきてしまいます。
その時にはすごく疲労が溜まっているので、一気にうつや慢性疲労症候群に。
- 忙しかったところでふと気が抜けると、アドレナリンなどのマスキング効果がなくなり同様にうつなどの危険。
- カフェインは外部から補給可能ですが、カフェインの過剰摂取も死亡例があるほど危険。また、耐性ができて、同じ効果を得るためにより多くのカフェインが必要となり過剰摂取の危険が高まる。
一方、イミダゾールペプチド(カルノシン)やベータアラニンは、活性酸素を除去するので、疲労感だけではなく、本当に疲労が解消されているとみていいんだろうか???
それとも、疲労感を感じないからと突き進んでいると、そのうち疲労がたまって大変なことになるんだろうか???
また、疲労は活性酸素の攻撃だけじゃなく、筋繊維の炎症、エネルギーの不足などでも起こるはずなのですが、こちらはベータアラニンでは解消しないはず。
やはり、無理せず、しっかり休息(睡眠・レスト・ストレッチ等)と栄養を管理していく必要はあると思います。